連続だがどこでも微分できない関数は存在するのか?ワイエルシュトラス関数の証明

教養

通常、関数が連続であれば、グラフにはある程度の滑らかさがあるように見える。

しかし、実際には実数全体で連続であるにもかかわらず、どの点においても微分できない関数が存在する。

この記事では、その具体例として、次のワイエルシュトラス関数を扱う。

$$ W(x) = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{2^n}\cos\left(\pi 13^n x\right). $$

この関数が実数全体で連続であり、同時に実数上のどの点でも微分不可能であることを証明する。

定理:連続だがどこでも微分できない関数の存在

関数 \(W:\mathbb{R}\to\mathbb{R}\) を、

$$ W(x) = \sum_{n=0}^{\infty} 2^{-n}\cos\left(\pi 13^n x\right) $$

によって定める。

このとき、級数は \(\mathbb{R}\) 上で一様収束し、

$$ W\in C(\mathbb{R}) $$

となる。

一方、\(W\) は任意の \(x_0\in\mathbb{R}\) において微分不可能である。

したがって、\(W\) は実数全体で連続でありながら、どこでも微分できない関数である。

証明

1.級数が一様収束すること

各非負整数 \(n\) に対して、

$$ f_n(x) = 2^{-n}\cos\left(\pi 13^n x\right) $$

とおく。

すべての \(x\in\mathbb{R}\) に対して、

$$ \left|f_n(x)\right| = 2^{-n} \left|\cos\left(\pi 13^n x\right)\right| \leq 2^{-n} $$

が成り立つ。

一方、等比級数

$$ \sum_{n=0}^{\infty}2^{-n} $$

は収束し、

$$ \sum_{n=0}^{\infty}2^{-n}=2 $$

である。

したがって、ワイエルシュトラスのM判定法により、

$$ \sum_{n=0}^{\infty} 2^{-n}\cos\left(\pi 13^n x\right) $$

は \(\mathbb{R}\) 上で一様収束する。

各 \(f_n\) は連続関数であり、連続関数列の一様極限は連続である。

よって、

$$ W\in C(\mathbb{R}) $$

である。

2.特定の周波数だけを取り出す補助関数

次に、\(W\) がどこでも微分できないことを示す。

そのために、フーリエ変換を使って、級数の中から特定の周波数だけを取り出す。

まず、関数 \(\varphi:\mathbb{R}\to\mathbb{R}\) を、

$$ \varphi(s) = \begin{cases} \displaystyle e\exp\left(-\frac{1}{1-s^2}\right), & |s|<1,\\ 0, & |s|\geq1 \end{cases} $$

と定める。

前回の記事で証明したように、

$$ \varphi\in C_c^\infty(\mathbb{R}) $$

である。

また、

$$ \varphi(0)=1 $$

である。

ここで、

$$ \widehat{\psi}(\xi) = 2\varphi\left( \frac{4(\xi-\pi)}{\pi} \right) $$

と定める。

このとき、

$$ \widehat{\psi}\in C_c^\infty(\mathbb{R}) $$

であり、

$$ \operatorname{supp}\widehat{\psi} \subset \left[ \frac{3\pi}{4}, \frac{5\pi}{4} \right] $$

となる。

特に、\(\widehat{\psi}\) の台は正の周波数 \(\pi\) の近くにだけ存在する。

さらに、

$$ \widehat{\psi}(\pi)=2 $$

である。

フーリエ変換を、

$$ \widehat{\psi}(\xi) = \int_{\mathbb{R}} \psi(u)e^{-i\xi u}\,du $$

という規約で定める。

\(\widehat{\psi}\) の逆フーリエ変換を、

$$ \psi(u) = \frac{1}{2\pi} \int_{\mathbb{R}} \widehat{\psi}(\xi)e^{i\xi u}\,d\xi $$

とする。

\(\widehat{\psi}\) は滑らかでコンパクトな台をもつため、その逆フーリエ変換 \(\psi\) はシュワルツ関数である。

すなわち、任意の非負整数 \(p,q\) に対して、

$$ \sup_{u\in\mathbb{R}} \left| u^p\psi^{(q)}(u) \right| <\infty $$

が成り立つ。

3.逆フーリエ変換が急速に減衰すること

ここで、\(\psi\) がシュワルツ関数になることを確認する。

任意の非負整数 \(q\) に対して、積分の中で微分することにより、

$$ \psi^{(q)}(u) = \frac{1}{2\pi} \int_{\mathbb{R}} (i\xi)^q\widehat{\psi}(\xi)e^{i\xi u}\,d\xi $$

となる。

また、

$$ u^p e^{i\xi u} = \frac{1}{i^p} \frac{\partial^p}{\partial\xi^p} e^{i\xi u} $$

である。

したがって、部分積分を \(p\) 回行うと、

$$ \begin{aligned} u^p\psi^{(q)}(u) &= \frac{1}{2\pi i^p} \int_{\mathbb{R}} (i\xi)^q\widehat{\psi}(\xi) \frac{\partial^p}{\partial\xi^p} e^{i\xi u}\,d\xi\\ &= \frac{(-1)^p}{2\pi i^p} \int_{\mathbb{R}} \frac{\partial^p}{\partial\xi^p} \left[ (i\xi)^q\widehat{\psi}(\xi) \right] e^{i\xi u}\,d\xi. \end{aligned} $$

\(\widehat{\psi}\) はコンパクトな台をもつため、部分積分における境界項は消える。

さらに、

$$ \frac{\partial^p}{\partial\xi^p} \left[ (i\xi)^q\widehat{\psi}(\xi) \right] $$

もコンパクトな台をもつ連続関数である。

したがって、その絶対値の積分は有限であり、

$$ \sup_{u\in\mathbb{R}} \left| u^p\psi^{(q)}(u) \right| <\infty $$

となる。

よって、\(\psi\) はシュワルツ関数である。

4.補助関数のゼロ次と一次のモーメント

\(\widehat{\psi}\) の台は、原点を含まない区間

$$ \left[ \frac{3\pi}{4}, \frac{5\pi}{4} \right] $$

に含まれる。

したがって、原点の近くでは \(\widehat{\psi}\) は恒等的にゼロである。

特に、

$$ \widehat{\psi}(0)=0 $$

であり、フーリエ変換の定義から、

$$ \int_{\mathbb{R}}\psi(u)\,du=0 $$

を得る。

さらに、

$$ \widehat{\psi}'(\xi) = -i \int_{\mathbb{R}} u\psi(u)e^{-i\xi u}\,du $$

である。

原点の近くで \(\widehat{\psi}=0\) であるから、

$$ \widehat{\psi}'(0)=0 $$

である。

したがって、

$$ \int_{\mathbb{R}}u\psi(u)\,du=0 $$

も成り立つ。

5.級数から第 \(m\) 番目の周波数だけを取り出す

任意の \(x_0\in\mathbb{R}\) を固定する。

非負整数 \(m\) に対して、

$$ t_m=13^{-m} $$

とおき、

$$ J_m(x_0) = \int_{\mathbb{R}} W(x_0-t_m u)\psi(u)\,du $$

と定める。

\(W\) を定義する級数は一様収束し、\(\psi\in L^1(\mathbb{R})\) であるから、級数と積分の順序を交換できる。

したがって、

$$ J_m(x_0) = \sum_{n=0}^{\infty} 2^{-n} \int_{\mathbb{R}} \cos\left( \pi13^n(x_0-13^{-m}u) \right) \psi(u)\,du $$

となる。

複素指数関数を用いると、

$$ \cos\theta = \frac{e^{i\theta}+e^{-i\theta}}{2} $$

であるから、

$$ \begin{aligned} & \int_{\mathbb{R}} \cos\left( \pi13^n(x_0-13^{-m}u) \right) \psi(u)\,du\\ &= \frac{1}{2} e^{i\pi13^n x_0} \widehat{\psi}\left( \pi13^{n-m} \right) + \frac{1}{2} e^{-i\pi13^n x_0} \widehat{\psi}\left( -\pi13^{n-m} \right). \end{aligned} $$

\(\widehat{\psi}\) の台は正の区間

$$ \left[ \frac{3\pi}{4}, \frac{5\pi}{4} \right] $$

に含まれる。

したがって、すべての \(n,m\) に対して、

$$ \widehat{\psi}\left( -\pi13^{n-m} \right)=0 $$

である。

また、\(n=m\) ならば、

$$ \pi13^{n-m}=\pi $$

であるため、

$$ \widehat{\psi}\left( \pi13^{n-m} \right) = \widehat{\psi}(\pi) = 2 $$

となる。

一方、\(n<m\) ならば、

$$ 0<\pi13^{n-m}\leq\frac{\pi}{13} <\frac{3\pi}{4} $$

である。

\(n>m\) ならば、

$$ \pi13^{n-m}\geq13\pi >\frac{5\pi}{4} $$

である。

よって、\(n\neq m\) のとき、

$$ \widehat{\psi}\left( \pi13^{n-m} \right)=0 $$

となる。

したがって、無限級数の中で \(n=m\) の項だけが残り、

$$ J_m(x_0) = 2^{-m}e^{i\pi13^m x_0} $$

を得る。

特に、

$$ \left|J_m(x_0)\right|=2^{-m} $$

である。

6.微分可能であると仮定する

\(W\) がある点 \(x_0\in\mathbb{R}\) で微分可能であると仮定する。

また、

$$ L=W'(x_0) $$

とおく。

\(\int_{\mathbb{R}}\psi(u)\,du=0\) であるから、

$$ \begin{aligned} J_m(x_0) &= \int_{\mathbb{R}} W(x_0-t_m u)\psi(u)\,du\\ &= \int_{\mathbb{R}} \left[ W(x_0-t_m u)-W(x_0) \right] \psi(u)\,du. \end{aligned} $$

したがって、

$$ \frac{J_m(x_0)}{t_m} = \int_{\mathbb{R}} \frac{ W(x_0-t_m u)-W(x_0) }{t_m} \psi(u)\,du $$

となる。

固定した \(u\in\mathbb{R}\) に対して、\(m\to\infty\) のとき \(t_m\to0\) である。

\(W\) が \(x_0\) で微分可能であるという仮定から、

$$ \frac{ W(x_0-t_m u)-W(x_0) }{t_m} \longrightarrow -Lu $$

が成り立つ。

7.積分極限の正当化

微分可能性から、ある \(\delta>0\) と定数 \(C>0\) が存在し、\(|h|\leq\delta\) のとき、

$$ |W(x_0+h)-W(x_0)| \leq C|h| $$

が成り立つ。

積分領域を、

$$ A_m = \left\{ u\in\mathbb{R}: |u|\leq\frac{\delta}{t_m} \right\} $$

とその補集合に分ける。

\(u\in A_m\) ならば、\(|t_m u|\leq\delta\) であるから、

$$ \left| \frac{ W(x_0-t_m u)-W(x_0) }{t_m} \right| \leq C|u| $$

となる。

\(\psi\) はシュワルツ関数であるから、

$$ \int_{\mathbb{R}}|u\psi(u)|\,du<\infty $$

である。

したがって、ルベーグの優収束定理により、

$$ \begin{aligned} & \lim_{m\to\infty} \int_{A_m} \frac{ W(x_0-t_m u)-W(x_0) }{t_m} \psi(u)\,du\\ &= -L\int_{\mathbb{R}}u\psi(u)\,du\\ &=0. \end{aligned} $$

次に、\(A_m\) の外側の積分を考える。

一様収束の証明から、

$$ |W(x)|\leq2 $$

がすべての \(x\in\mathbb{R}\) に対して成り立つ。

したがって、

$$ |W(x_0-t_m u)-W(x_0)| \leq4 $$

である。

よって、

$$ \begin{aligned} & \left| \int_{\mathbb{R}\setminus A_m} \frac{ W(x_0-t_m u)-W(x_0) }{t_m} \psi(u)\,du \right|\\ &\leq \frac{4}{t_m} \int_{|u|>\delta/t_m} |\psi(u)|\,du. \end{aligned} $$

\(\psi\) はシュワルツ関数であるから、任意の \(N>0\) に対して、ある定数 \(C_N>0\) が存在し、

$$ |\psi(u)| \leq C_N(1+|u|)^{-N} $$

となる。

\(N>2\) とすれば、

$$ \frac{1}{t_m} \int_{|u|>\delta/t_m} |\psi(u)|\,du \longrightarrow0 $$

である。

以上により、

$$ \frac{J_m(x_0)}{t_m} \longrightarrow0 $$

を得る。

8.矛盾

一方、すでに、

$$ J_m(x_0) = 2^{-m}e^{i\pi13^m x_0} $$

と計算した。

また、\(t_m=13^{-m}\) であるから、

$$ \frac{J_m(x_0)}{t_m} = \left(\frac{13}{2}\right)^m e^{i\pi13^m x_0} $$

となる。

したがって、その絶対値は、

$$ \left| \frac{J_m(x_0)}{t_m} \right| = \left(\frac{13}{2}\right)^m $$

である。

\(13/2>1\) であるから、

$$ \left(\frac{13}{2}\right)^m \longrightarrow\infty $$

となる。

これは、

$$ \frac{J_m(x_0)}{t_m} \longrightarrow0 $$

と矛盾する。

したがって、\(W\) は \(x_0\) において微分可能ではない。

\(x_0\in\mathbb{R}\) は任意に選んだので、\(W\) は実数上のどの点においても微分不可能である。

以上により、

$$ W(x) = \sum_{n=0}^{\infty} 2^{-n}\cos\left(\pi13^n x\right) $$

は実数全体で連続でありながら、どこでも微分できない関数である。

$$ \Box $$

具体例:部分和の形

ワイエルシュトラス関数の第 \(N\) 部分和を、

$$ W_N(x) = \sum_{n=0}^{N} 2^{-n}\cos\left(\pi13^n x\right) $$

とする。

最初のいくつかは、

$$ W_0(x)=\cos(\pi x), $$

$$ W_1(x) = \cos(\pi x) + \frac{1}{2}\cos(13\pi x), $$

$$ W_2(x) = \cos(\pi x) + \frac{1}{2}\cos(13\pi x) + \frac{1}{4}\cos(169\pi x) $$

である。

各部分和 \(W_N\) は有限個の余弦関数の和なので、無限回微分可能である。

しかし、\(N\) を増やすごとに、振幅の小さな非常に細かい振動が加わっていく。

形式的に微分すると、

$$ W_N'(x) = -\pi \sum_{n=0}^{N} \left(\frac{13}{2}\right)^n \sin\left(\pi13^n x\right) $$

となる。

元の級数では各項の振幅 \(2^{-n}\) はゼロへ近づく。一方、微分すると、周波数 \(13^n\) が掛かるため、微分後の振幅は、

$$ \left(\frac{13}{2}\right)^n $$

となり、急速に増大する。

これが、極限関数に接線が存在しなくなる直感的な理由である。

ただし、形式的に微分した級数が発散することだけでは、元の関数が微分不可能であることの証明にはならない。

実際の証明では、補助関数 \(\psi\) を使って各周波数を正確に取り出すことで、どの点でも微分できないことを示した。

ワイエルシュトラス関数の基本的な値

\(x=0\) では、すべての余弦が \(1\) になるので、

$$ W(0) = \sum_{n=0}^{\infty}2^{-n} = 2 $$

である。

また、\(13^n\) は奇数であるため、

$$ \cos(\pi13^n)=-1 $$

である。したがって、

$$ W(1) = -\sum_{n=0}^{\infty}2^{-n} = -2 $$

となる。

さらに、すべての \(n\) に対して、

$$ \cos\left(\pi13^n(x+2)\right) = \cos\left(\pi13^n x\right) $$

であるから、

$$ W(x+2)=W(x) $$

が成り立つ。

したがって、\(W\) は周期 \(2\) の連続関数である。

また、余弦関数は偶関数なので、

$$ W(-x)=W(x) $$

も成り立つ。

このように、ワイエルシュトラス関数は有界で周期的な連続関数でありながら、そのグラフ上には接線を引ける点が一つも存在しない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました